スガワラ’s blog

日々思うことを書き連ねます。

平成特撮シリーズの前哨戦

のちの平成特撮(特に1989年から始まる平成ゴジラシリーズ)の、前段階とされた作品をようやく観た。

 

ガンヘッド(1989)」である。

 

かなりレアな作品で、今回U-NEXTでの配信が開始されたので見ることができた。

 

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2025年、太平洋上の火山島8JOに作られた世界初の全自動ロボット製造工場「マザータワー」を管理するスーパーコンピュータ<カイロン5>が全世界に宣戦布告した。そして、開戦から373日目、ガンヘッド大隊最後の一機が、マザータワーの守護神「エアロボット」に敗れ、人類は全面降伏することになった。が、<カイロン5>は勝利と共になぜか活動を停止した。
 このロボット戦争から13年後のある日。現在では封鎖地区である8JOに侵入するものがあった。自由人を標榜する”Bバンガー”の面々達である。そのひとりブルックリンは、ロボット戦争の最後の戦闘マシーン「ガンヘッド・ユニット507」を発見、コクピットに乗り込んだ……。

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というあらすじの、近未来映画だ。

観た感想は、正直言ってあまり面白くなかった。

まずストーリーの必然性があまり感じられない。

突然現れたニムとの関係性や、セブン、イレブンのカイロン5との関係性の説明の希薄さ、鉱石が人類とロボットとの戦いのキーポイントだが、何故必要なのか、といった設定の説明不足がどうも気になる。結果としてストーリーの緊密性が薄れている印象を持った。

また、全体の画面の暗さ、セリフの聞き取りづらさがストーリの把握のしづらさに追い討ちをかけてしまっている。

 

ただ、見所があった。

CGをあまり使用しない模型がメインの特撮で、SFの世界観を出し、白熱したアクションを撮影できたのは当時としては画期的なところだ。

常日頃から、映画は最初の導入が大切だ、と思っている。作品の世界観を観客に提示し、その世界に引き込めば、多少理解に難しいところがあったとしても観客はついていこうとする。感覚で理解できるレベルまで映画に浸からせることができるのだ。

(この点、クリストファー・ノーランの作品の世界観の作り方は秀逸だ。『インターステラー』しかり、『バットマン・ビギンズ』しかり)

 

この映画の最初の世界観の作り方はその点ではとても良かった。しかし、中間部が冗長なのと、ストーリーの弱さが目についた作品だった。

 

 

福島原発のことを何も知らない自分を恥じる

「吠えない犬 安倍政権7年8ヶ月とメディア・コントロール(マーティ・ファクラー著 双葉社)」を読み、調査報道という言葉を知った。その本で「優れた調査報道の一つ」と紹介されていたのが、朝日新聞で連載された「プロメテウスの罠」シリーズ。東日本大震災で発生した福島原発事故の原因、顛末、影響を丹念に聞き取り、報道したものだ。地震発生から100時間に焦点をあて、原発の事故発生からその対応に追われた政府の状況を記録したのが「官邸の100時間 検証 福島原発事故(木村英昭著 岩波書店)」だ。

 読んだ動機は、結局福島原発事故のことは断片的な報道で知り得た知識しかなく、一つの視点で情報を仕入れたことがないので読んでみようーそのような軽い動機だった。

 しかし読んでみると、そのあまりに克明な記述と次から次へと起こる予期せぬ事態、人々の焦り、諦め、それでも必死に状況にしがみつきなんとか対応しようとするあがきに心奪われ、時間が立つのを忘れるほどに読み耽った(夢中になりすぎて、降りる駅をすぎてしまったほど)

 以前「名プロデューサーは嘘をつく、ベートーヴェン捏造(かげはら志帆著、柏書房)の紹介コメントで「これは徹夜本だ!」とあったが(実際、この本もあっという間に読み通してしまう引き込まれてしまう内容だった。)この本もそう。知らなかった情報が次から次へと出てきて、息をつく暇もない。

 本書で最も特徴的なのは、調査報道の基本、膨大な事実に基づいて説明していること。その徹底ぶりがすごい。政治家が発した言葉、一つ一つには、誰の証言によるものか、という脚注がつけられ、異なる証言があった場合は、そのどちらも紹介、事実の積み上げがこんなリアリティを持って迫ってくるという体験は初めてだった。それほどまでに至上稀にみる大惨事だったのだろう。

 詳しい内容はぜひお読みいただきたいが、本書を読んで自分の考えを改めたことが2つ。原発対応で全く何もできなかった、といろいろな報道で聞き、そう思っていたが、必死に原発のコントロールを試みようとしたこと。そして人間はミスを犯す生物である。ミスを隠蔽しようとすることは非常に人間的な反応だが、正直にミスを認め、克服し前に進むことが最も必要なことであるのだ。

 

「官邸の100時間ー検証 福島原発事故」

木村英昭著 岩波書店