スガワラ’s blog

日々思うことを書き連ねます。

福島原発のことを何も知らない自分を恥じる

「吠えない犬 安倍政権7年8ヶ月とメディア・コントロール(マーティ・ファクラー著 双葉社)」を読み、調査報道という言葉を知った。その本で「優れた調査報道の一つ」と紹介されていたのが、朝日新聞で連載された「プロメテウスの罠」シリーズ。東日本大震災で発生した福島原発事故の原因、顛末、影響を丹念に聞き取り、報道したものだ。地震発生から100時間に焦点をあて、原発の事故発生からその対応に追われた政府の状況を記録したのが「官邸の100時間 検証 福島原発事故(木村英昭著 岩波書店)」だ。

 読んだ動機は、結局福島原発事故のことは断片的な報道で知り得た知識しかなく、一つの視点で情報を仕入れたことがないので読んでみようーそのような軽い動機だった。

 しかし読んでみると、そのあまりに克明な記述と次から次へと起こる予期せぬ事態、人々の焦り、諦め、それでも必死に状況にしがみつきなんとか対応しようとするあがきに心奪われ、時間が立つのを忘れるほどに読み耽った(夢中になりすぎて、降りる駅をすぎてしまったほど)

 以前「名プロデューサーは嘘をつく、ベートーヴェン捏造(かげはら志帆著、柏書房)の紹介コメントで「これは徹夜本だ!」とあったが(実際、この本もあっという間に読み通してしまう引き込まれてしまう内容だった。)この本もそう。知らなかった情報が次から次へと出てきて、息をつく暇もない。

 本書で最も特徴的なのは、調査報道の基本、膨大な事実に基づいて説明していること。その徹底ぶりがすごい。政治家が発した言葉、一つ一つには、誰の証言によるものか、という脚注がつけられ、異なる証言があった場合は、そのどちらも紹介、事実の積み上げがこんなリアリティを持って迫ってくるという体験は初めてだった。それほどまでに至上稀にみる大惨事だったのだろう。

 詳しい内容はぜひお読みいただきたいが、本書を読んで自分の考えを改めたことが2つ。原発対応で全く何もできなかった、といろいろな報道で聞き、そう思っていたが、必死に原発のコントロールを試みようとしたこと。そして人間はミスを犯す生物である。ミスを隠蔽しようとすることは非常に人間的な反応だが、正直にミスを認め、克服し前に進むことが最も必要なことであるのだ。

 

「官邸の100時間ー検証 福島原発事故」

木村英昭著 岩波書店